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米控訴裁、AI学習の「フェアユース」で初の判断:トムソン・ロイター勝訴、Rossが敗れた理由

米控訴裁、AI学習の「フェアユース」で初の判断:トムソン・ロイター勝訴、Rossが敗れた理由

AIコンプライアンス • Admin • • 3 回閲覧

米連邦第3巡回区控訴裁判所が9月30日に公開した判決は、AIの学習データをめぐる著作権紛争に、控訴審として初めて線を引きました。Thomson Reuters Enterprise Centre GmbH v. Ross Intelligence Inc(事件番号25-2153)において、裁判所は、すでに倒産した法律検索企業 Ross Intelligence が、トムソン・ロイターのWestlawの「ヘッドノート」(判例要旨)をAI法律検索エンジンの学習に使った行為は「フェアユース」に当たらないと判断しました。AIをめぐる文脈で米控訴裁がフェアユースの抗弁を判断したのは初めてで、ロイターは「同種で初」と報じています。

判決が示したこと

経緯は長くさかのぼります。トムソン・ロイターは2020年に提訴し、Rossが数千件のヘッドノートを複製して競合するAI検索製品の学習に使ったと主張。Rossは2021年、訴訟費用を理由にプラットフォームを閉鎖しました。デラウェア州地裁がまずトムソン・ロイター勝訴の判断を下し、控訴裁は9月29日に判決を封印提出、30日に公開して原審を支持しました。3人の裁判官は全員一致で、ヘッドノートは判例の要点を抽出したもので「創造のきらめき」を備え著作権で保護される、Rossはそれを「高度に類似した目的」の直接の競合製品づくりに使った、複製に変容性はなくフェアユースの抗弁は成立しない、と判断しました。判決を執筆したモンゴメリー=リーブス判事はこう書いています。「この事件はAI法務テクノロジーの未来に関わるように見えるが、実のところ普通の著作権事件にすぎない」。

裁判所が自ら引いた境界

この判決の重みは、裁判所が「扱わない」と明言した部分にこそあります。第一に、Rossが作ったのは生成AIではなく検索型の検索エンジンであり、裁判所は脚注で、米司法省がOpenAIを相手取る著作権訴訟で示した懸念は「本件には当てはまらない」と明記しました。第二に、裁判所が判断したのは「著作物を複製して同種の競合製品を作る」という類型だけで、生成AIの学習がフェアユースに当たるかは答えていません。第三に、これは米国連邦著作権法の下での判断であり、米国法域内の同種行為を拘束するもので、世界共通のルールではありません。

影響を受けるのは誰か

第一に、検索型・RAG型のAI製品を作るチームです。学習データが著作権データベースから直接取られ、出力がそのデータベースの代替になるなら、「変容的利用」という盾はほぼ立ちません。第二に、訴訟中のAI企業です。作家、報道機関、音楽レーベルは学習データをめぐり数十件の訴訟を起こし、裁判所の立場は割れ、2026年にも複数の係争が残っています。本件は権利者に控訴審レベルの勝訴例を与えますが、生成AIの学習をめぐる事件は個別に論証が必要です。第三に権利者自身です。権利行使の道筋は明確になりましたが、この判決を「AI学習はすべて有料」の白紙委任状にしてはいけません。

コンプライアンス上どうすべきか

「AIの学習」という言葉をフェアユースのお守りにしてはいけません。裁判所が見たのは三つです。何を複製したか、何のために使ったか、市場を代替したか。検索型や競合型のAIを作る前に、コーパスの著作権デューデリジェンスを行い、取れるライセンスは取りましょう。データの出所、ライセンスの連鎖、出力管理の記録は残してください。訴訟の証拠開示でものを言います。そして事業を展開する法域の判例を追い続けてください。第3巡回区の今日が、第9巡回区の明日とは限りません。

避けたい三つの誤読

誤読その一:本件を「AI学習はすべて有料」と読むこと。裁判所は生成AIを明確に除外しており、権利者があらゆるモデル開発者に突きつける根拠にはなりません。誤読その二:「うちは生成AIだから関係ない」と思うこと。「著作物を複製して同種の競合製品を作ることは変容的利用ではない」という論理は、検索拡張やAI検索製品にも同様の警鐘です。第9巡回区も先日のDMCA事件で生成型と検索型の区別をしています。誤読その三:訴訟そのもののコストを過小評価すること。Rossは終審判決を待たず、2021年に訴訟費用が続かず製品を閉鎖しました。著作権訴訟が小企業を潰す経路は、判決の結論そのもの以上に警戒に値します。

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