BioBasicsBenchは、OpenAIが2026年11月6日に公開した新しいベンチマークだ。教科書的な生物学の設問ではなく、モデルに100件の実際のウェットラボ課題を与える——ゲル画像を読み、コロニーを数え、顕微鏡写真を解釈し、実験の結論が成り立つかを判断させる。酵素設計企業のLigoと共同開発したこのベンチマークで、最新モデルGPT-6 Astraは平均66.7%を記録し、前世代のGPT-5.6 Solを22.9ポイント上回った。ただしOpenAIは注意を促す。スコアが上がったからといって、モデルが科学者の代わりになれるわけではない。
何を測るのか:実際の実験が残した生の証拠
100件の課題は、タンパク質実験、イメージングとフローサイトメトリー、定量アッセイ、核酸実験、分子クローニングという5つの日常領域をカバーし、証拠はすべてLigoの科学者自身の実験から取られたものだ。ゲルとブロットの画像、コロニー平板の写真、顕微鏡画像、シーケンスファイル、機器が出力した表、実験操作の動画まで含まれる。各課題には専門家が書いた採点ルーブリックが付き、3段階の審査を経ている。OpenAIは7モデル、37通りのモデルと推論強度の組み合わせを測り、各課題を5回ずつ実行して計18,500件の採点を行った。最高の推論強度では、GPT-6 Astraの平均66.7%(95%信頼区間60.3%~73.1%)、GPT-6.1 Solが62.0%、GPT-5.6 Solは43.8%にとどまった。GPT-6 Cyberは以前、Linuxカーネルの評価で948件の権限昇格の脆弱性を見つけているが、あちらは脆弱性探し、こちらは実験の読解だ。
66.7%が意味すること、意味しないこと
注目すべきはランキングが一つ増えたことではなく、出題の仕方が変わったことだ。従来の科学ベンチマークは論文から選んだきれいな図表が中心で、モデルがそれに正解しても、実際の実験の混乱——失敗した実験、ぼやけた画像、矛盾する観測——に対処できるとは限らない。BioBasicsBenchが測るのはまさにそこだ。モデルは証拠不足を見抜き、対照実験の不具合に気づかなければならない。公開された例では、Astraは2種類の蛍光色素の検出波長が重なり、明るさを直接比べられないことを見抜き、陰性対照プレートの抗生物質が間違って表示されていることも発見した。同じOpenAIは最近、研究モデルが評価で誤った判断をした2件の事例も公開しており、弱点を隠さない。ただし限界も明確だ。測られた7モデルはすべてOpenAI製で、人間のベースラインも他社のモデルもない。66.7%は採点ルーブリックから換算した平均スコアであり、「3分の2の問題を解いた」わけでも、ましてや合格率でもない。
次に見るべきは2点だ。OpenAIがデータセット、採点ルーブリック、採点コードを公開し、他の研究室がスコアを再現して自社モデルを測れるようにするかどうか。そしてAstraの弱点が次回縮まるかどうか——個別の課題では、先入観に引きずられてコロニーを選び間違えたり、自分に都合の良い観測だけを採用したりする場面がまだある。生命科学の研究者にとって、このベンチマークは今のところ能力マップとして読むのが妥当だ。モデルが実験のどの段階で役に立ち、どの段階は人が確認すべきかを示すもので、研究室に入るための免許ではない。