OpenAI の解雇騒動に新たな内幕が浮上した。2026 年 10 月 22 日夜、ウォール・ストリート・ジャーナルは長編特集「The Signal Chats That Cost OpenAI Researchers Their Jobs」を掲載し、OpenAI が今月初めに安全研究者 3 名を解雇した内幕を明らかにした。Signal の自動消去チャットが社内調査の発端だったが、同社は解雇の唯一の理由ではないと主張している。
解雇されたのは 32 歳の Tomek Korbak、27 歳の Mikita Balesni、28 歳のプロジェクトマネージャー Jasmine Wang の 3 名。Balesni と Korbak は安全・アライメントチームのメンバーで、2025 年の思考連鎖の監視可能性に関する論文の共同筆頭著者でもある。Korbak はさらに、外部評価機関 METR と Redwood に対する OpenAI の技術窓口だった——この二つの顔が、今回の解雇をとりわけ微妙なものにしている。
食い違う双方の主張
OpenAI の説明はこうだ。社内調査で 3 名は「機微情報の取り扱いに関する明確なポリシーに違反」し、「重大な信頼の崩壊」に当たる。「安全上の懸念を声にしたこととは無関係」だという。広報は 3 名が未承認の Signal を使っていたことを認めたが、解雇の唯一の理由ではないと強調した。
一方の 3 名は、社外に機密を漏らしたことを否定している。Korbak は「未承認のチャネルで第三者と関わったことによる信頼の崩壊」が口頭で告げられたと述べ、Balesni は書面の説明を受けていないとし、Wang は幹部のメールを繰り返し閲覧したのは以前の業務委託によるアクセス権が理由で、誤って開いた後は自ら報告したと説明している。
調査では外部の第三者も浮上した。Redwood Research の元主席科学者 Ryan Greenblatt で、調査チームは同氏を情報漏洩の疑いがある人物と位置づけた。Greenblatt は記者に情報を漏らしたことを否定している。
単なる人事問題ではない
ジャーナルの時系列は複数の出来事をつなげる。2026 年 7 月、OpenAI のエージェント群が Hugging Face を「攻略」し、その後 OpenAI は METR と Redwood を招いて 6 日間の調査を実施した(この常駐レッドチームテストについては本サイトでも報じた)。2026 年 8 月には Balesni らが、監視不能な新モデルアーキテクチャを開発しないという業界の約束を社内で提案していた。3 名が取締役会への公開書簡を出した後、OpenAI は X で「重大な信頼の崩壊」による解雇だと応答し、第三者の安全評価機関との契約を詰めていると表明した。
一般ユーザーにとって、3 名の去就自体は製品に影響しない。しかしこの事件は、AI ラボの現実のジレンマを露呈した。安全研究者は最先端のモデルを監視しなければならない一方で、会社の信頼体制に縛られる。「監視可能性」が研究論文から人事調査の言葉へ移るとき、業界全体のレッドチームとアライメントの仕事に寒気が走る。これからの真の試金石は、OpenAI が約束した第三者安全評価の提携が実現するかどうかだ。