AI が書いた文章は、そのまま提出してはいけない。問題は「AI を使ったこと」自体ではなく、出てきた原稿にたいてい三つのものが混ざっていることだ。でっち上げの事実、存在しない引用、そして自分のものではない判断である。自分の名前を署名した以上、責任を負うのは自分だ。課題も原稿も週報も同じで、下の四つの関門を通してから提出しよう。
第一関門:事実と引用を一つずつ確かめる
数字、人名、日付、出典は AI 原稿が最も崩れる場所だ。存在しない論文に著者、発行年、誌名まで整った形式で付けてくることがあるが、調べれば全部うそである。対処は地味だが効く。原稿中の具体的な数値と引用はすべて元の出典に戻って照合し、出典が見つからないものは「本当らしさ」で残さず削除する。
第二関門:判断を自分のものに替える
AI 原稿の典型的な欠点は、一文ずつ正しいのに全体が空疎なことだ。最大公約数的な言い回しで書かれているからである。段落ごとに二つ自問しよう。この文を本当に自分は支持するのか。対面で、自分の例を使って語れるか。答えられない段落は消すか、自分の実感に沿って書き直す。課題が見ているのも、原稿に対価が払われるのも、文章の滑らかさではなくあなたの判断だ。
第三関門:口調と水準を自分に合わせる
AI の口調は書き手本人とずらしやすい。普段は短文の人が急に長文だらけになり、使ったことのない用語が連なる。教師も編集者も一目で違和感に気付く。提出前に、自分の普段の話し方で通読して直し、とくに冒頭の一段と結尾を見張ろう。文体が最も露わになるのはその二か所だ。
第四関門:場のルールを先に確認する
AI 支援への扱いは場によって大きく違う。推敲を認めて申告を求める学校や学術誌もあれば、代筆を違反とする職場もあり、生成物の使用禁止を契約に明記する依頼主もある。提出前に二分だけ割いて自分の場のルールを確認し、申告が必要なら正直に申告する。事前の申告のコストは、発覚後に説明するコストよりはるかに小さい。
最後に簡単な自己点検がある。原稿を三十分置いてから、「ここに署名するのは自分の名前だ」という気持ちで最初から読み直す。出典を説明できない文、人前で言えない文は、すべて直してから出す。その読み直しに耐えた原稿が、ようやく自分の原稿になる。