DeepGEM 2.0 は 2026 年 10 月 10 日、広州で発表された。広州医科大学附属第一医院の国家呼吸医学センターが金域医学と共同で発表した肺がん病理・遺伝子マルチモーダル大規模モデルで、鍾南山院士のチームが開発に加わった。狙いは診断そのものの代替ではなく、その手前のボトルネックにある。肺がん患者の遺伝子検査は高くて遅く、基層病院の多くには実施条件自体がない。このモデルは通常の病理スライドのデジタル画像を入力とし、最速 1 分で 12 の遺伝子ターゲットについて変異リスクを予測し、医師がどの方向を先に調べるべきかを示す。
省かれるのはどの工程か
肺がんの分子標的治療は、腫瘍がどのドライバー変異を持つかを知ることから始まる。既存の方法は二つとも負担が大きい。逐次単一遺伝子検査は EGFR から順に調べ、一部の症例では 1 か月待つ。次世代シーケンシングの大規模パネルは数百から数千の遺伝子を一度に走査するが、費用は数千元から 2 万元ほどで、実際には多くの患者のドライバー変異は 1〜2 個しかない。DeepGEM 2.0 はその前段に立つ事前スクリーニングだ。スライド画像は病理診断の通常の産物であり、追加の採取は要らない。高確率と判定されれば近隣で標的を絞った PCR や免疫染色による確認へ進み、低確率なら大規模パネルや非標的の選択肢を検討する。「まず全部調べる」を「まず計算し、それから精密に調べる」に置き換える発想である。
6 ターゲットから 12 ターゲットへ
前世代は EGFR、KRAS、ALK、ROS1、TP53、LRP1B の 6 遺伝子を予測し、チームは 8000 件を超える病理サンプルから画像と遺伝子の対応パターンを抽出した。2.0 では BRAF、ERBB2、FGFR、MET、NTRK、RET が加わり、合計 12 となり、中国で承認済みの肺がん分子標的薬に対応する遺伝子ターゲットをすべてカバーする。公表された予測精度は最高 90%。AI スクリーニングと標的確認検査の組み合わせにより、遺伝子検査全体の費用は数百元台まで下がる見通しだと開発側は説明する。下がるのはシーケンシング自体の価格ではなく、事前スクリーニングで弾かれる無駄な全走査の分である。
本当の落点は基層病院
この話の主戦場は大病院ではなく、県級・地級の病院だ。シーケンシング設備がなく、患者は上級病院へ転院して型判定を待つか、化学療法を始めて分子標的治療の機会を逃す。事前スクリーニングに必要なのはデジタル化されたスライドと計算資源だけであり、振り分けは地元で完結する。これは医療 AI の最近の流れとも一致する。Google の AMIE は実際の外来研究で鑑別診断を臨床フローに組み込んだ。勝負は「正しく答えられるか」から「実際の診療チェーンに入り、患者の時間と費用を節約できるか」へ移っている。
事前スクリーニングは確定診断ではない
90% は「最高で到達しうる」数字であり、すべてのターゲットと病院で得られる平均ではない。ターゲットごとにサンプル数には大きな差があり、希少なターゲットの予測信頼性にはさらなる実世界データが要る。また、高確率でも標的確認検査は必須であり、低確率をもって変異なしとしてはならない。見落としのコストを負うのは患者だからだ。開発側自身、次の段階は成果をサンプルから製品にし、基層へ広げることだと述べている。注目すべきは三点だ。ターゲット別の精度データがいつ公表されるか、外部病院での検証結果、そしてスクリーニングと確認の組み合わせが実際の請求で総コストをどこまで下げられるか。これらに答えが出るまでは、DeepGEM 2.0 は遺伝子検査の代替ではなく、臨床経路のはっきりした事前スクリーニングのアップグレードとして読むべきだろう。