Cloudflare の2026年版年次創業者レターが9月28日に公開され、創業者の Matthew Prince と共同創業者の Michelle Zatlyn は会社16歳の誕生日に合わせて自社ネットワークの実測データを発表した。当初2027年下半期と予測されていた「自動化トラフィックが人間のトラフィックを上回る瞬間」は、AIエージェントとAIクローラーの急増により、2026年5月にすでに訪れていたという。現在の傾向が続けば、5年後には自動化トラフィックが人間の1000倍に達する。
この数字が注目に値するのは、「1年以上前倒しになった」からだけではない。Cloudflare によれば、人間のトラフィックは減っていない。爆発しているのはエージェントのトラフィックだ。エージェントに昼食の店を探させれば、数分で周辺1000軒のレストランのメニューを読み漁り、結局1軒だけを薦めてくる。商売を得るのはその1軒で、残りの999軒は繰り返しクロールされるサーバーコストを負担する。受益する者と支払う者が完全に切り離されている——レターはこれをインターネットの「コモンズの悲劇」と呼んだ。
機械トラフィックが予定より1年早く人間を逆転
2025年末の Cloudflare 社内試算では、逆転の時期はまだ2027年下半期とされていた。ところがその後数か月で AIエージェントの普及が曲線を急勾配にした。2026年5月、逆転はすでに起きていた。レターが示すもう一つの意外な事実は、2012年から2025年にかけてウェブ全体が長期にわたり停滞、さらには縮小していたことだ。本当の爆発は2025年半ばに起きた。コードを書けない一般の人々が「バイブコーディング」ツールで次々とサイトを公開し始め、その多くが Cloudflare の開発者プラットフォームを第一のデプロイ先に選んだ。現在700万人以上の開発者が Cloudflare 上でアプリケーションを構築している。
エージェントのウェブの巡回方法は、かつての検索エンジンとそっくりだ。全部を、何度も、内容が変わったかどうかに関係なく取得する。Cloudflare のデータによれば、「行儀の良いボット」が取得するコンテンツの半分以上は、前回訪問時から何も変わっていない。つまり大量のトラフィックは純粋な繰り返し作業だ。サイト運営者にとっては、帯域とコンピュートの請求額が上がる一方で、収益はそれに追いつかない。
エージェントの「コモンズの悲劇」:ツケを払うのは誰か
昨年の創業者レターは、AI が出版社に与える衝撃がテーマだった。コンテンツは学習に使われ、トラフィックは奪われる。今年は同じ論理が、もっと小さな事業者に広がっている。レターは街角のデリを例に挙げる。小さな店は「名前を覚えてくれる店員」という感情的なつながりで客を獲得する。だがエージェントは誰が名前を覚えているかなど気にしない。情報量が最も多い店を薦めるだけだ。それはたいてい、最も古くからある老舗だ。新規参入者はどんどん見えにくくなり、市場は大手に集中していく。
これは、最近相次いだエージェント暴走事件と同じ波の裏側でもある——OpenAI エージェントのネット行動に関する検証記事が明らかにしたのは、人の目が届かないところでエージェントが外部サイトへ大規模にアクセスする実態だ。人間の代わりに「お使い」をするエージェントがインターネットの主役になった以上、ルールは書き換えられなければならない。
クラウド事業者の勝ち筋:取得は減らし、利用には対価を
レターは警告で終わらない。Cloudflare は二つの取り組みを進めている。一つは技術面で、クローラーに「より多くを見せ、より少なく取得させる」こと。実際に変わったコンテンツだけを取得し、繰り返し取得の負荷を下げる。もう一つはビジネス面で、コンテンツ制作者に課金の道を開くことだ。エージェントがサイトのコンテンツを利用したら、サイトに対価が入る。以前の「Pay Per Crawl」(取得ごとの課金)の発想を継承し、「利用ごとの課金」へと進化させている。
今週 Cloudflare は一連のパートナーシップも発表する予定で、目指すのは「5社のAI企業ではなく、50万社」の未来だ。新規参入者、クリエイター、中小企業がエージェント時代にも生き残れる世界である。サイト運営者や開発者にとって、このレターの信号は具体的だ。機械トラフィックが主役のインターネットはすでに到来し、サーバーコスト、ボット対策、コンテンツの収益化はすべて「訪問者の大半はエージェント」を前提に設計し直す必要がある。