RFdiffusion3 の完全な設計方案が公開された。この生成 AI システムは個々の原子の位置を指定してタンパク質と核酸を設計でき、ワシントン大学、オックスフォード大学、NVIDIA などからなる国際チームは 2026 年 10 月 16 日、論文を『Science』に発表した。10 月 19 日に明らかになった詳細によれば、その設計図どおりに作られた 2 種類の酵素は、実際の化学反応で意図した機能をすでに果たしている。タンパク質設計にとっての意味は、生成モデルがまた一つ増えたことではなく、機能の成否を決める原子レベルに設計精度が到達したことにある。
構造予測から、原子を一つずつ配置する設計へ
責任著者のデビッド・ベイカー(David Baker)はワシントン大学タンパク質設計研究所の責任者で、タンパク質構造予測の研究により 2024 年のノーベル化学賞を受賞した。同チームの初期の RosettaFold はアミノ酸同士の空間的関係を学び、既存のタンパク質の形を予測するものだった。2023 年の RFdiffusion と 2025 年の RFdiffusion2 は新しいタンパク質の設計へ進んだが、扱う単位はアミノ酸残基のままで、結合や触媒の成否を決める個々の原子は間接的に推測するしかなかった。
RFdiffusion3 は手法を変えた。AlphaFold3 のネットワーク構造を参考に、各アミノ酸を最大 14 個の原子で表し、拡散過程で全原子の三次元座標を直接調整する。前 2 世代とはコードを共有していない。研究者は条件を具体的に指定できる。どの原子をどの位置に置くか、水素結合をどう形成するか、特定の原子がタンパク質内部に広がる範囲をどこまでにするか。そのうえでモデルが全制約を同時に満たす構造を生成する。化学の細部を先に決めてから分子全体を育てる進め方こそ、残基レベルのツールとの差がつく点だ。
41 の活性部位で 37 勝、実験でも機能した
設計ツールの良し悪しは、計算が当たるかと、作ったものが働くかの 2 点で決まる。チームは既存の酵素の活性部位 41 件で比較設計を行い、RFdiffusion3 は 37 件で RFdiffusion2 を上回り、生成速度は前世代の約 10 倍だった。より重要なのは実験検証で、これで設計したホスホトリエステラーゼとペプチド切断酵素はいずれも実験室で意図した化学反応を触媒し、コンピューター上のスコア止まりではなかった。
この結果は同時に限界も示している。検証されたのは酵素の活性部位のように目標が明確で制約を精密に書けるタスクであり、反応を触媒できる設計が薬や治療になるまでには、発現、安定性、安全性、量産化という長い関門が残る。RFdiffusion3 を「どんなタンパク質でも設計できる」と言うのは論文の証拠を超えており、制約を精密に書けるタスクほど優位性が際立つ、と捉えるのが正確だ。
オープンなのはモデルファイルではなく方法全体
RFdiffusion3 は 2025 年 12 月 3 日時点で既にオープンソース化されており、コードと学習コードは Rosetta Commons の Foundry を通じて GitHub で提供されている。今回の『Science』論文が補ったのは、完全な設計原理と実験検証だ。チームが挙げる今後の方向性には、マイクロプラスチックを分解する酵素、遺伝子治療用の合成転写因子、環境モニタリング用のバイオセンサーがあり、いずれも DNA や小分子との原子レベルの精密な相互作用を必要とする点で新モデルの得意領域と重なる。
関連する取り組みでは、DeepMind による AI 設計タンパク質への透かしが設計成果の標識と追跡を扱っており、設計精度を原子レベルへ押し上げる本稿の流れとは前後の関係にある。生成能力が一歩進むほど、検証とガバナンスは省略できなくなる。一般の研究室でも RFdiffusion3 は今すぐダウンロードして試せる。本当の試練は今後数か月、独立したチームが論文レベルの設計成功率を再現できるかどうかだ。