Grok Voice 3.0 は、xAI が 2026 年 10 月 14 日に発表した音声対音声モデルで、同日から Voice Agent API で提供が始まり、価格は前世代と同じに据え置かれた。Artificial Analysis の音声対音声指数では 86.9 点で首位に立った。順位以上に注目すべきは xAI が明かした運用実績で、このモデルはすでに Tesla 車内と Starlink のサポートセンターで 1 日数百万件の会話を処理している。音声エージェントの競争軸が、デモの出来栄えから「電話 1 本を最後まで解決できるか」へ移りつつある。
首位を支えるスコアの中身
86.9 点は Artificial Analysis の独立評価によるもので、音声推論に加え、ブラインド対決通話での好みやタスク成功率を合成した指数だ。比較すると Grok Voice 2.0 は 81.3 点、OpenAI の GPT-Live-1(Astra、中設定)は 83.2 点、Google の Gemini 3.8 Live は 82.6 点だった。内訳では音声推論(Big Bench Audio)が 98.5%、間の取り方や割り込みへの自然さを測る Full Duplex Bench が 97% に達した。一方、実在のサポート通話を模した τ-Voice では 71.6% で GPT-Live-1 とほぼ互角にとどまり、xAI が前面に出す優位性は応答遅延の約 40% 短縮と 1 秒未満の反応速度だ。つまり今回の首位は全項目制覇ではなく、総合点と速さで取ったものになる。
本当の試験場は Starlink の 1 日 2 万件の電話
発表で示された本番データは具体的だ。Starlink のコールセンターでは Grok Voice が多言語で 1 日約 2 万件の着信を処理し、約 70% は人手を介さず解決、販売系の通話では 4 件に 1 件が電話を切る前に購入まで至るという。単一のエージェントが本人確認、機器トラブルの切り分け、補償クレジットの発行、交換品の発送までを一貫して担う。ServiceNow が管理し 200 以上の企業シナリオで正確さと顧客体験を採点する EVA-Bench では、正確率 74% で首位だった。車載では桁がさらに大きく、Tesla 車内で 1 日数百万件の会話を支え、運転者はハンズフリーで予定確認やメール返信、Grok Bot 経由のコーヒー注文やレストラン予約ができる。Grok は最近 The X Subscription への同梱も進んでおり、音声はその生態系で利用者に最も近い層になっている。
値段は据え置き、企業の計算式が変わる
API 価格は 1 分 0.08 ドルで 2.0 と同額。grok-voice-latest を使うエージェントはコード変更なしに自動で新版へ切り替わった。Artificial Analysis がタスク完了あたりのコストで測ると、GPT-Live-1 と GPT-Realtime-2.1 のどちらよりも安い。企業にとって選定基準は、モデルの賢さだけでなく「解決できた電話 1 本あたりの単価」と「人へ回らずに済んだ割合」へ移っている。ただし留意点もある。生産データもコスト比較も xAI の発表と評価機関の計測に基づき、実環境のノイズや訛り、割り込みに最も近い τ-Voice では互角にとどまる。自社の通話録音と方言分布で試してから移行を判断するのが無難だ。