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Sakana AIがMASSを公開:モデルが自分でチームを組み、採点し、経験を学び直す

Sakana AIがMASSを公開:モデルが自分でチームを組み、採点し、経験を学び直す

AI情報 • Admin • • 7 回閲覧

Sakana AIは2026年10月11日、カリフォルニア大学バークレー校の研究者と共同で開発した手法MASSを公開した。再帰的自己改善に新しい教材を与える試みで、単一のエージェントに手探りさせるのではなく、まず同じモデルをチームとして働かせ、チームの最良の経験をモデルの重みに蒸留し直す。MASSはMulti-Agent Self-Supervisionの略称で、実験の基礎モデルにはQwen3.6-27Bを使い、qwen-codeのコーディングエージェント環境で動かした。

なぜ自分で自分を教えるのか

最前線のタスクには厄介な性質がある。仕事が難しくなるほど、正誤を判定できる人が減るのだ。コードはテストで検証できても、研究レポートの出来には自動採点の物差しがないことが多い。そこでMASSは極端な構成を取る。実行者、ワークフロー最適化者、評価者がすべて同一のモデルで、課題を提出し、分担の組み方を変え、仲間の成果に点をつける。より強い監督者がいない状況で、この同体ループが本当に回を追うごとに良くなるのかを確かめるのが著者らの狙いだ。これは、マルチエージェントチームのコストが5.1倍になっても品質がほぼ動かなかった実測と好対照をなす。あの研究は実行時にチームを組む価値があるかを問い、MASSはチームの経験がモデル自身の能力として定着するかを問うている。

内外二層のループの回り方

MASSの流れは二層に分かれる。内側のループは分担の最適化だ。コーディネーターがタスクをサブエージェントに割り振り、ワークフローには各役割の責任、成果物の契約、呼び出し順序が書き込まれる。評価者は異なるワークフローが生んだ成果を比べて現時点の最良を残し、最適化者はそれを踏まえて次の分担を書き直す。外側のループは学習を担う。最良のワークフローを繰り返し走らせ、自己評価が最も高い実行軌跡を選び、LoRAで共有モデルを微調整する。更新されたモデルが再び三つの席に座り、次のラウンドに入る。訓練タスクは金融、ロボティクス、製薬の三領域にまたがる合成研究スイートで全12件、そのうち3件はテスト専用に取り分け、訓練には使わない。

二ラウンド後の成績表

  • 取り分けた3件のテストタスクで、第2ラウンドのモデルの基礎モデルに対する勝率は69.9%に達した。第1ラウンドでは53.9%だった。
  • MLR-Bench、DSBench、ScienceAgentBench、AstaBenchの四つの公開ベンチマークで、第2ラウンドのモデルの出力トークン当たりスコアは基礎モデルの1.2倍から1.6倍に上がった。
  • 第1ラウンドのモデルは教師トークン2880万で勝率68.3%に到達した。単一エージェントの軌跡だけで訓練した対照群は4200万トークンを使って64.0%だった。チームの軌跡のほうが情報密度が高い。これがMASSの最も確かな証拠だ。
  • 評価者と外部審査員(GPT-5.5とClaude Opus 4.8、ループには一切関与しない)の判断の一致率は73%から93%へ上昇した。

著者自身がかけた冷や水

成績表には明確な裏面がある。同じ第2ラウンドのモデルでも、Terminal-Bench 2.0とSWE-bench Verifiedではトークン当たりスコアが基礎モデルの0.96倍と0.94倍にとどまり、ソフトウェア工学のタスクへは成果が移らなかった。著者は訓練タスクにコーディング工学系のサンプルが欠けていたためだと説明するが、自己改善の伸びがタスク分布に強く依存することの表れでもある。より大きな懸念は論文の結論に書かれている。実行、最適化、評価が同じ目を共有すると、共通の盲点が「進歩」として次世代モデルに書き込まれ、回を追うごとに見つけにくくなる。アブレーションでは、ループのボトルネックは評価者よりも最適化者にあることが多いと分かった。フィードバックが正確でも、分担を組み替えられなければ意味がない。

MASSはまだ二ラウンド回しただけであり、「モデルが持続的に自己進化する」という話には遠い。それでも曖昧なビジョンを再現可能な実験に変えた点に意味がある。チーム協働の価値は実行時だけでなく訓練時にも現れること、そして同体評価のリスクを表に出したことだ。次に追うべきは、第3、第4ラウンドでも伸びが続くのか、盲点の問題に外部の検証手段が追いつけるのかである。

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