OpenAIは2026年10月6日、内部モデルが生成した719本の数学写本を公開した。10月8日、TechCrunchとThe Decoderは、この公開が数学界自身の諮問グループが定めた基準に達していないと相次いで指摘し、一部の数学者は同僚にOpenAIとの協働停止を呼びかけている。争点は証明の正しさそのものではない。誰もそのまま読めない700本超の証明について、検証し、理解し、帰属を処理するコストを誰が払うのか、である。
諮問グループの基準に、大半が届いていない
公開直前の9月末、プリンストン高等研究所に置かれた数学と人工知能の諮問グループ(AGMAI)はガイドラインを公表し、その第一の要請は、高度な未解決問題をプロプライエタリなモデルでテストしないことだった。ところがOpenAIが使ったのはまさに内部の専有モデルである。TechCrunchの集計では、719本のうちモデルの思考過程の要約が付いたのは10本だけだった。誰も直接読めない証明についてはLeanによる形式化が推奨されたが、今回のバッチでそれが行われたのは一部にとどまる。今週、ケンブリッジ大学とキングス・カレッジ・ロンドンの研究者は、Navier-Stokes方程式に由来する問題について、OpenAIの自然言語の証明とLeanコードの間に少なくとも2か所の不一致があることを示す論文を発表し、こうした自動形式化の証明が査読を免れることはできないと警告した。
ボイコット要求はどこから来たのか
人類数学協会(AHM)の声明は、テレンス・タオが転載したことで急速に広がった。声明は、数学者はこの仕事を頼んでいないとし、700本超のファイルを一度に放出するのは学問の実演ではなく力の誇示だと述べ、同僚にOpenAIとの協働をやめるよう求めている。タオ自身の批判はより具体的で、従来の画期的な成果は講演やワークショップ、新たな協働を生んだのに対し、今回の結果は分野自体に関心がなく質問にも答えられない人々によって「解かれ」、理解の仕事が共同体全体に押し付けられたというものだ。これに先立ち、フィールズ賞受賞者25名が連名で、真なる命題の大量生産は学問の育つ土壌を壊し、帰属と引用の問題を招くと警告していた。もちろん異論もある。公開は非公開よりましで、ボイコットは現実的でないという声だ。AGMAI自体の姿勢も穏やかで、数学者が自ら問いを選ぶ自由を保ち、ツールと計算資源への公平なアクセスを得ることを主眼に置いている。
生成は数時間、理解の請求は共同体へ
帳簿を見れば怒りの理由が分かる。複雑性理論の研究者Scott Aaronsonによれば、この成果群は1問あたり平均約3時間の計算で得られたという。生成側はすでに一括生産できるほど安くなった。一方、証明を検証し、同僚が使える知識に変えるには希少な専門家の時間が必要で、その費用を払う者はいまだいない。AGMAIはOpenAIに対し、理解の作業を担う人間の数学者への資金援助を提案していたが、今回それは実現しなかった。次に見るべきは、OpenAIがあと何問解けるかではなく、不足するメタデータを補い、検証の経路を開き、帰属と資金の扱いを明確にするかどうかだ。生成のコストと理解のコストが別々の請求書に分かれたままでは、数学界とフロンティア研究機関の溝は広がる一方だろう。