AIの会議要約が人名を間違えるのは、たいてい要約の段階が鈍いからではありません。誤りはもっと早い段階で仕込まれています。文字起こしで人名が聞き間違えられ、話者分離で発言が別人へ付けられ、最後に要約がその誤りを事実として議事録に書き込むのです。点検はこの連鎖に沿って進め、どの段階で壊れたかを特定してから直してください。いきなり道具を替えるのは後回しです。
第一段階、文字起こし:聞き間違いか、置き換えか
議事録で間違っている人名を、一つずつ元の文字稿で検索してください。文字稿の時点ですでに間違っているなら問題は文字起こしです。人名、珍しい字、訛りのある発音は、音声認識が最も弱い種類です。日常の学習データに少なく、より一般的な同音の字を出しやすいからです。姓がよりありふれた姓に化ける、製品名が二つの普通の言葉に割れる、といった形が典型です。文字稿が正しくて議事録で変わっているなら、問題は第三段階にあります。対策は三つです。会議前に参加者リスト、案件名、重要用語を道具や指示文へ先に与えること。人名は初出で原稿の表記を保つよう求めること。大事な会議は、よく間違う言葉を文字稿全体で一度置換してから要約させることです。
第二段階、話者分離:何を言ったかより、誰が言ったかが壊れやすい
複数人の会議にはもっと見えにくい誤りがあります。言葉は一字違わないのに、話者の表示だけが違っていて、ある人の約束が別の人のものとして記録される誤りです。議事録では最も危険で、読む側は気づきにくく、後追いと責任の所在がずれてしまいます。声質が似ている、発言がかぶる、リモート回線の音質が悪いときに起きやすいものです。対策は、可能な範囲で一人に一本のマイクか、分離トラック対応の会議道具で録ること。話者と氏名を手動で結べる道具なら、会議前に一分かけて結んでおくこと。生成後は、約束、数字、期限の帰属に限り必ず元の音声を聞き直してから議事録を送ることです。
第三段階、要約:不確かな情報が確かな口調で書かれる
前二段階に少しでもノイズがあると、要約でさらに増幅されます。大規模モデルは議事録を書くとき、曖昧な指示を具体的な人名へ補いがちです。文体として完全で滑らかに見えることが求められ、聞き取れなかったと認めるより推測を選ぶからです。この段階には規則を立ててください。指示文に、人名、数字、日付で確信が持てないものは原稿の表現を保つか、確認待ちと明記し、勝手に補わないと明示すること。生成後は原稿の人名リストと逆向きに照合し、余分な人名や合わない人名を一つずつ追うことです。
そのまま使える会議後の点検順
- まず人を見る:議事録に出る全員の名前が参加者リストにあり、表記が揃っているか。
- 次に帰属を見る:約束、反対、担当といった言葉を含む文は、話者が合っているか。迷ったらその部分を聞き直す。
- 次に数字を見る:金額、日付、割合の三種を、原稿や音声と一つずつ照らす。
- 最後に不在を見る:発言していない人が議事録に登場する、発言の多い人が全く出てこない、どちらも分離段階の誤りの合図。
この順で点検すれば、一時間の会議でも五分ほどで終えられます。結局、人名の間違いは特定の道具の専売ではありません。文字起こし、分離、要約という連鎖の各環が持ち込む誤差です。点検の動作を固定することの方が、道具の乗り換えより効きます。