英国の AI バイオセキュリティ研究所計画は 2026 年 10 月 24 日に正式発表された。英政府は同日、AI で生物学的脅威を検出する研究所の新設に 1 億ポンド(約 1 億 3400 万ドル)を投じ、OpenAI、Anthropic、Google DeepMind が参画すると発表した。ロイター通信によると、同日発表された総額約 6 億ポンドの AI 安全対策資金パッケージの中で最大の項目だ。
資金の内訳はかなり具体的だ。研究所本体の 1 億ポンドに加え、病原体対策に 6500 万ポンド、OpenAI と Anthropic が最大 2 億ポンド相当のモデル利用クレジットを提供し、Google DeepMind とロンドンの AI ライフサイエンス企業 Basecamp Research が技術支援を行う。このほか、英 AI 安全研究所(AISI)に 1 億 2000 万ポンドの追加予算、重要インフラのサイバー防御に 1 億 3000 万ポンドが投じられ、「National Cyber Shield」と「National Exposure and Real-Time Vulnerability Centre」の 2 つの新プログラムが含まれる。
モデルの評価から、自前の研究所建設へ
英国は「AI の安全性評価」を国家機関化した最も早い国の一つであり、AISI は 2023 年の設立以来、フロンティアモデルの生物・サイバーリスク評価を担ってきた。今回の資金投入は、評価業務を「紙の報告書」から「実体のある能力」へ押し上げるものだ。他社のモデルを評価するだけでなく、自前の研究所で AI を使って生物学的脅威を能動的に監視する。カニシュカ・ナラヤン AI 担当大臣の言葉も明快だ——この研究所を「世界最高水準の科学的専門知識を結集し、新興の生物学的脅威から人々を守る」重要な機関にするのが目標だという。
政府は現金、ラボは「計算資源クーポン」
注目すべき分担は、政府が研究所の建設費を出す一方、OpenAI と Anthropic が出すのは現金ではなく「モデル利用クレジット」だという点だ。AI 安全分野ではこうした官民連携が定番になりつつある——研究所は最強モデルの実測アクセスを必要とし、大手企業は規制当局への協力姿勢を示す必要がある。業界にとってのシグナルは明確だ。バイオセキュリティは AI 安全の議論の周縁から予算の中心へ移り、各国が同様の投資で追随する可能性が高い。割り引いて見るべき点もある。2 億ポンドのクレジットが実際にどれだけの計算資源をカバーするのか、研究所の評価結果がモデル提供企業からどれだけ独立性を保てるのか——この 2 点について発表は何も答えていない。